その人は昔、スイスでプロスキーヤーをやっていた。その後料理人となり煉瓦亭で修行を始める。そのときに一緒に働いていたのが若かりし頃のポールボキューズである。
フレンチのシェフを長年努めて後進に道を譲るとき彼は恵比寿の一角に独立を決める。
コンセプトは誰もが利用できる「街角レストラン」。
店名は思い出の地スイスの登山鉄道の終着駅の名前をつけることにした。それはその人の「料理人生の終着駅」を意味する。
お店は直ぐに「恵比寿の名店」として認知され昼夜問わずお客さんで賑わうことになる。
テレビで紹介され行列ができるも元からのお客様を大切にすることを忘れない。
後にその人はそう語る。「僕は行列が嫌いなんです。どうしても追われてしまって仕事が雑になってしまうから」と。
一度、人形町に移るが再び恵比寿に戻ってきてくれる。
それから11年間、多くの人に最高の味を提供してそのすべての人に愛される。店の名前は「Montenvers(モンタンベール)」。シェフは伊藤義信さん。

伊藤さんの作るカレーはとても丁寧で優しい。ご飯は伊藤さんの実家で作る安全で美味しい玄米を使い、カレーは油もかさ増しの小麦粉も 一切使わないので食べ終わっても胃にもたれずお腹に優しい。選べる具材も食感を大切にしてエビはプリプリ、焼きポークは表面カリッと中がスプーンで切れる柔らかさ。
Hair Hanaに来てくれるお客さんにも自信を持ってご紹介できるので、ヘアーをしてから食べに行くか、食べてからHanaに来るか、いつの間にかどっちがメインだかわからないくらいです。
そのモンタンベールが今日(3月25日)をもって閉店します。
週末に伊藤さんが
わざわざ来てくれて親しい人にだけと教えてくれました。
混み合ってお世話になった人が食べられなくならないためだそうです。

ここまで長々書いたのは本当にモンタンベールが好きな人にだけ知ってほしいからです。
味と技術は有限です。恵比寿の名店の灯りがまた一つ消えてしまいます。
伊藤さん、お疲れさまでした。
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